なぜskp1変異体ではスピンドルが曲がってしまうか、という話の続きです。
前回は、
(1)「 スピンドル微小管の制御異常」説
について書きました。
微小管結合タンパク質が過剰に存在していることでスピンドル構造の異常を引き起こしているせいではないのか?という説です。
次の説について書く前に、スピンドル微小管の伸長について書く必要があります。
少しskp1のことは脇に置いといて、野生型の分裂酵母で分裂後期がどのように進むかをみておきましょう。
以前書いたことですが、微小管のプラス端はダイナミックにチューブリンの重合・脱重合を繰り返しており、その性質を利用して染色体の動原体部分を捕まえます。ここが分裂中期です(下の図参照)。ここでは、この動原体と微小管をつなぐ微小管を動原体微小管(ktMTs)と呼ぶことにします。
そして、微小管による動原体の接着が完了すると、動原体と中心体(SPB)をつなぐ動原体微小管(ktMTs)が脱重合されることで染色体の分配が起きます(後期A)。
(この後期Aの過程までは以前書きました。しかし当時、その後の後期Bのことを書くのを忘れてしまいました。今日はそこを書きます。)
染色体は後期Aにおける動原体微小管の脱重合によってSPB(中心体)まで分離しましたが、その後、SPBのあいだをつなぐ極間微小管(ipMTs)のオーバーラップ領域が互いに反対方向にスライドし、同時にそれらの微小管のプラス端ではチューブリン2量体の重合が起きているので、オーバーラップ領域がなくなることはありません。
このようにして、極間微小管が伸長することでSPBがさらに分離していき、確実に2個の細胞に染色体を分け与えます。この時期が後期B (anaphase B)です。
それでは、話をskp1変異体で見られる「曲がるスピンドル」に戻しましょう。
前回、スピンドルが曲がる原因を考えた仮説(1)において、もし微小管が安定化されただけなら、スピンドルの長さが増しても良い気がする、と書きました。これは、もし後期Bのスピンドル微小管が安定化されたら、微小管がどんどんスライドして伸びていくのではないか、という推測です。
しかし、実際には伸びるのではなく、曲がってしまいます。そこで、次回は別の仮説を考えることにします。
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