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2012年2月24日金曜日

酵母では分裂期でも核膜が崩壊しない

さて、スピンドル微小管が後期にどのように伸長していくのかというのを確認したところで、話をskp1変異体で見られる「曲がるスピンドル」に戻します。

以前、スピンドルが曲がる原因を考えた仮説(1)で述べたのは、もし後期Bのスピンドル微小管が安定化されたら、微小管がどんどんスライドして伸びていくはずなのに、実際には伸びるのではなく、曲がってしまう。これはなぜだ?という話でしたね。

ここで、核膜が重要な意味を持つ可能性が出てきました。
なぜ核膜が出てきたの?と思うかもしれませんが、、、、


核膜は、今まで書くと言いつつ書かなかった大切なものです。ここで書くことにします。


酵母は基本的にはヒトなどの高等生物と同様のメカニズムで細胞分裂をおこなうのですが、ひとつ大きな違いがあります。
高等生物は分裂期に核膜が崩壊する(Nuclear Envelope Break Down, NEBD)ので、open mitosis (核がopenになってmitosisをおこなうというイメージ)と呼ばれます。これに対して酵母を含めた下等真核細胞では、分裂期でも核膜が崩壊しないことが分かっています。これをclosed mitosis(核がclosedしたままでのmitosis)と呼びます。


いうまでもなく、核膜は核と細胞質とを隔てる重要な構造で、内膜と外膜の2重の膜構造になってます。核膜を突き抜けて物質を移動・輸送させることはできませんが、核膜には核膜孔と呼ばれる多くの穴が開いてます。小さい分子は受動的に核・細胞質間を行き来することができます。また、核膜には核膜孔複合体(Nuclear Pore Complex, NPC)が存在しており、大きな分子の能動的な輸送を可能にしています。

能動的・受動的というのは高校生くらいのかたには意味不明な難しい概念だと思いますので、今日のところはそこを無視してもOKです。大ざっぱに書くと、小さな分子はエネルギーを使わなくても核膜孔を通過できます(受動的)が、大きな分子は勝手に核膜孔を通過することはできません。

でも細胞が機能するためには、核の中に大きなタンパク質などを輸送する必要があるので、輸送制御因子Ran GTPaseと核内輸送因子Importinがエネルギーを投じて、大きなタンパク質を核内に輸送しています(能動的)。この概念は微小管形成にとても重要なところなので、必ずいつか戻ってきます。

さて、こうして核と細胞質は核膜によって隔てられているわけです。この核膜は、高等生物では分裂期に消失しますが、酵母など下等な真核生物では分裂期でも消失しません。

ということなので、当然、酵母のスピンドル微小管は核内に形成されることになります。

さて、いよいよ今度こそ、話をskp1に戻しましょう。
スピンドル微小管が曲がってしまうことと核膜には、どんな関係が考えられるでしょうか。







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