[Japanese/English]

2010年12月28日火曜日

インドの街を歩く(1)


毎度遅れての海外レポートです。今回は11月初旬にいってきたインド・ケララ州でのHFSP meetingの話の続きです。

学会が全行程を終えたのは深夜でした。シンガポール経由で日本に帰国するわけですが、ティルバナンタプーラム(トリヴァンドラム)発シンガポール行きの飛行機はその日は飛んでおらず(週2便)、出発するのは翌日の深夜。身動きが取れずに、とりあえずその日は普通にホテルに泊まります。

翌日も、フライトのある深夜までおよそ10時間という長い空き時間が生じました。共同研究者たちは欧州行きの便なので、朝にホテルを出てしまいます。その後、深夜までの待ち時間をどうつぶすか考えた末、せっかくだからとインド観光に出かけました。

私が思い立ったのはHFSPが公式に手配したインド観光ツアーが出発した後だったので、タクシーに一人乗り込み、Kovalam Beach Hotelから一気にインド最南端のカニャクマリを目指しました。「片道2.5時間だよ」と言われ、それなら往復5時間で、帰りのフライトにちょうどいいと考えたのです。この日の夜に空港で日本人研究者に再会したときには「いや、それはむちゃくちゃ勇気ありますねぇ、、、」と驚かれました。私はそのとき全然不安がなかったんですが。

なにしろ物価が安いから、タクシーを一日雇ってもチップ込みで6,000円未満。ただし安全は保証されていないので、海外旅行保険には加入しておいたほうがいいですね。

まず、車窓から見る「観光地ではない」インドの町並みはすごく面白かったです。学会会場はすべてが完璧にととのえられた本当にオアシスのようなリゾート地でした。それに比べてタクシーの車窓から見る素のインドの光景は、、、私の勝手なイメージですが日本の終戦直後か昭和20年代のイメージに近いと感じました。人々の服装もとてもきれいとはいえず、道路も最低限の間に合わせの舗装で道ばたは土埃が舞い、牛やヤギ、犬が寝そべっている。民家や商店はぐちゃぐちゃに建ち並び、ドアもなく屋根も傾き今にも崩れ落ちそう、でもそこで売っているのは欧米日本のものと遜色ない最新の携帯電話。


上下水道なんかまったく整備されてないように見えるのに、携帯電話網は異常なまでに整備されてます。山の中でも携帯電話に使う回線を土中に埋める工事をよくしてました。そのおかげで、どんな田舎でも私のiPhoneは的確にAirtelやVodafone Indiaの電波をキャッチできました(ちなみにSofabankの海外パケット使い放題)。


道中出会った村のいくつかはtaxi driverの言葉を借りればpoor villageだそうで、そのような文明があるのかどうか分からないようなぼろぼろな貧しい田舎の村に行っても東大事務からのメールが読める。ここは人々の生活が原始的なのか文明的なのかものすごい違和感があります。なんとなく、「20世紀少年」の新旧がまざったようなヘンな文明社会。

これなんか、どないやねん、っていう感じの不気味さ。こんなのが普通にごろごろ転がっている町並み。もちろん自分以外の外国人観光客なんかいないので、これらは観光ではなく地元民のための施設ですよ。


次回はそこから続けます。

2010年12月22日水曜日

JST菊地俊郎さんの本について(2)

昨日書いたJSTの菊地参事の本「院生・ポスドクのための研究人生 サバイバルガイド」ですが、もう少しだけ内容を書きます。

この本には、

(1) 研究者が大学院を出てから先、どういう就職先や身分があるのか。現在の状況と今後の情勢。

(2) 研究するにあたり不可欠である研究費。どのような仕組みになっているのか。最新情報を交えてまとめてある。

(3) 研究者として独創的であるためにはどうしたらよいのか。独創的な発想をするためのヒントと、研究費獲得のための具体的なアドバイス。

について書かれています。

なかなか踏み込んだ内容ですね。しかし、マスコミ記事にありがちな、日本が理系研究について抱えている問題を批判して過剰な不安をあおるような無責任で非建設的な内容ではありません。菊地さんの本は「ガイド」と銘打っているように、日本や世界の現状を踏まえて、そのなかでどのように「自分がやりたい研究」を推進していくのか、というポジティブな議論です。

菊地さんと直接お話しして感じるのは常にポジティブであるということです。私はこれはとても重要なことであると考えます。その菊地さんの人柄がぎゅっと詰まった一冊になっていると実感します。


(注)私は菊地さんから宣伝を頼まれているわけではありません(笑)

2010年12月21日火曜日

JSTの菊地さんが本を出版されました

さきがけが何なのかあまり説明してなかったですが、
科学技術振興機構(JST)という独立行政法人が出している研究者への助成金のなかに、「さきがけ」というものがあります。

国が選定する科学技術政策にあった研究領域を設定し、その領域に選ばれた若手研究者に助成金が出されます。たとえば、私が参加するのは「生命システムの動作原理と基盤技術」という領域でして、3年間の研究期間が与えられ、その中で研究を推進し、結果を出していきます。とてもこんな短い文章では「さきがけが何か」を説明することはできませんが、興味のある若い大学院生、大学生、高校生はJSTの「さきがけ」のwebsiteを見てみて下さい。私はさきがけを既に2年終えているので、残りはあと1年なのですが、さきがけに所属していられる間に、自分の目線から見た「さきがけの良さ」をここで書いておく必要があると感じています。

今日は、それが目的ではなくて、そのさきがけ「生命システムの動作原理と基盤技術」領域でお世話になっているJSTの技術参事である菊地俊郎さんが本をお書きになりました、というお話です。
タイトルは、院生・ポスドクのための研究人生サバイバルガイド」(講談社・ブルーバックス)です。


私も早速読みました。
とても生々しいなコレ!!(笑)
博士余り時代を生き抜く処方箋、という副題も、「高学歴ワーキングプアにならないために今、やるべきことは?」っていう帯も、業界の人にとってはかなり刺激的です。

自分のことを例にとって考えると、学部生や大学院生になったばかりのときというのは、あまり具体的に「ポスドク研究員になろう」とか考える人は少ないのかもしれません。漠然と、研究をやっていられたらいいな、と思ってはいても、具体的にその身分がどういうものなのか、どういう職場があるのか、研究費はどこから与えられるのか、何も知らないまま研究をはじめる人も少なくないはずです。

それは自分の例ですが(苦笑)、そういう大学院生時代にこの本を読んでいたら、もっと具体的な研究者像というものを描くことができたし、どういうところに注意しなければいけないのか、もっと心構えができたはずだと思います。そう言う意味で、特に若い大学院生くらいのかたにおすすめしたいと思います。

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ちなみに、私は科研費などという言葉を知らずにポスドク研究員になったくらいです。自分はこういった反省?を踏まえて、その辺も同じ研究室の大学院生さんに伝えていきたいです。経験を伝えることしかできませんから。

日本は科学と技術で生き残るしかないといわれる一方で、「理系離れ」の時代とも言われてます。この本を読んでひとりでも多くの人がサバイバルしてくれればと思います。自分も含めて。時間があればこの辺も私感を書いていこうかと思います。

2010年12月20日月曜日

さきがけ公開発表会

本日はさきがけ「生命システムの動作原理と基盤技術」領域の第二期生による公開発表会でした。

皆素晴らしい成果をあげていることは言うまでもありませんが、それにしても「さきがけ」というシステムが生命科学の発展にどれだけ貢献してきたか、これまでの多くの研究者の実績には目を見張るものがあります。

昨年の事業仕分けによって今後かあやぶまれましたが、最悪の事態は避けられようです。事業仕分けのような言葉遊びゲームでこれまでの輝かしい業績をばかにするのはいかがなものでしょうか。

逆に、さきがけでもっと生命科学の課題が採択されるような領域を作って欲しいです。「生命システムの動作原理と基盤技術」領域の応募・採択の倍率は約30倍という異常なまでの狭き門でしたから。

2010年12月19日日曜日

さきがけ領域会議in小柴ホール

現在、さきがけ「生命システムの動作原理と基盤技術」の領域会議の真っ最中。

会場は東大・理学部の小柴ホール。完全にホームでの戦いですが、小柴ホールの壇上に立つのは偉い先生であることが多かったから、自分が立つのは緊張しますね。自分の口頭発表は無事に終わりました。

自分のことは棚に上げていいますが、いろんな分野の、しかもむちゃくちゃレベルの高い研究発表が続きます。これがさきがけです。





領域会議は国内の様々なところで開催しますが、自分のホームでの開催は感慨深いです。

明日は東大の一条ホールで公開発表会です。私は来年公開発表です。さあこれから一年間、さらに頑張らなければなりません。