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2010年4月20日火曜日

染色体を分離する


チェックボイントが解除されると、いよいよ染色体が分配されます。この時期を分裂後期Aといいます。実際には英語でanaphase Aと呼ぶことが多いので、ここでもそう呼ぶことにします。

染色体が分配されるにあたってまず何よりも重要なのは姉妹染色分体をつないでいるコヒーシンの切断です。コヒーシンと呼ばれるタンパク質は、S期に染色体が複製されるときに染色体に結合し、複製された一対の姉妹染色分体が離れないようにつなぎ止めています。コヒーシンは輪のような構造をしたタンパク質複合体で、姉妹染色分体2本をくるっとひとまわりするようにしてつなぎ止めています。

分裂期にはそのコヒーシンのRad21というタンパク質が切断されるので、姉妹染色分体は離れ離れになります。

この切断を起こす酵素はセパレースというタンパク質です。セパレースはanaphase Aの開始時に活性化されますが、どうしてセパレースの活性化はanaphaseの時期に限られているのでしょうか?

anaphaseが開始するまでの間、セパレースの活性は、セキュリンというタンパク質によって抑制されています。しかし、微小管が染色体との接着を確立させて染色体分配の準備がととのうと、スピンドルチェックボイントが解除されて、後期開始複合体APCが活性化します。

APCはユビキチンリガーゼというタンパク質分解酵素で、セキュリンを分解します。その結果、それまで活性が抑えられていたセパレースが活性化できるようになります。そのためコヒーシンRad21は切断され、染色体が分配されます。

この現象はすべての真核細胞生物において共通ですが、これらの発見の多くは、Kim Nasmyth, Frank Uhlmann, 柳田充弘先生ら(順不同)、酵母を研究するグループによってなされました。大きな発見において、酵母の研究が重要な位置を占めていることは特筆に値します。

長い話になりましたが、スピンドル微小管が動原体を捕らえてから実際に微小管が染色体を分配するまでの一連の流れが分かっていただけるのではないか、と思います。

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