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2010年2月19日金曜日

微小管結合タンパク質 ~ 分裂酵母のスピンドル(紡錘体)微小管形成 その2~


前回は、2個並んだ中心体からヒゲのような微小管が生えてきたところまで説明しました。ここから、微小管結合タンパク質がいよいよ登場です。

微小管結合タンパク質は、文字通り、微小管に結合するタンパク質です。微小管結合タンパク質は微小管に結合して、一般的に微小管のダイナミクスや挙動を制御します。あるものは微小管の先端にのみ存在(局在)したり、あるものは微小管全体に結合したりと結合様式は様々です。実はこれまでのステップにも微小管結合タンパク質は重要な役割を担っていたのです。例えば、微小管重合活性をもつγーチューブリン複合体もそのひとつです。

分裂酵母のスピンドル形成において、γーチューブリン複合体の働きによって2個の中心体から生えてきた短いヒゲのような微小管が安定して伸びていくためには、微小管結合タンパク質の働きが不可欠です。

重要な微小管結合タンパク質をいくつか挙げておきます。TOG (tumor overexpressed gene)と呼ばれる微小管結合タンパク質は、酵母からヒトまで真核細胞生物において広く保存されている微小管結合タンパク質で、分裂酵母ではふたつのタンパク質Alp14とDis1がTOGの相同因子です。TOGは、別のタンパク質TACC (transforming acidic coiled-coil)と複合体を形成することが多くの生き物で見つかっています。分裂酵母でもAlp14は、TACCの相同因子であるAlp7と複合体を形成します。TACC-TOGの複合体は微小管の安定化に極めて重要な役割を担うことが知られています。

また、EB1 (end-binding 1)という名の微小管結合タンパク質もひろく保存され、微小管の安定化に重要な役割を担います。分裂酵母ではMal3というタンパク質がその相同因子です。分裂酵母のスピンドル微小管形成において、中心体から生えた微小管が安定して成長するためには、TACC-TOG (Alp7-Alp14)、EB1 (Mal3)などが欠かせません。

ある特定の微小管結合タンパク質は微小管の上を移動します。微小管をレールだとするとその上を歩くイメージです。これらのタンパク質は微小管上を歩きながら別のタンパク質などをその線路に沿って運んでいく働きがあり、モータータンパク質と呼ばれています。キネシンやダイニンがこの部類に属します。
そして次回は、スピンドル形成における、あるキネシンの役割について説明します。

文献について
Dis1:
Nabeshima et al. Genes Dev (1995)
Nakaseko et al. Curr Biol (2001)
Alp7-Alp14:
Garcia et al. EMBO J (2001)
Sato and Toda. Nature (2007)
TOG全般に関する総説:
Ohkura et al. J Cell Sci (2001)
Mal3:
Beinhauer et al. J Cell Biol (1997)
EB1総説:
清末優子 微小管プラス端集積因子(+TIPs)の伸長端認識メカニズム 実験医学3月号 (2008)
Asakawa and Toda. Cell Cycle (2006)
敬称略。あまり詳細に文献を引用していないことをお詫び申し上げます。

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