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2010年2月1日月曜日

極性成長2 古い末端と新しい末端


やっと本来の微小管の話に戻ります。
今日は極性成長に関する第2弾です。

分裂酵母には細長い極性があるということは先日書いたとおりです。つまり、細胞の両端のみが、細胞の成長する場所になっているわけです。細胞の成長端は決まっていて、その方向に成長していくのが極性成長です。
面白いことに、分裂酵母では、細胞の右側と左側では成長を始めるタイミングが違うーーNETOというーーという現象があります。わりと古くからこの概念が提唱されています(1985年)。NETOとは何でしょうか?

図をみながら、細胞周期の分裂期からスタートして考えてみましょう。分裂期には細胞の両端は成長しないで一定の大きさを保ちます。そしてスピンドル微小管が形成されて染色体が分配されますが、その後、細胞質分裂(cytokinesis)が起き、隔壁(septum)によって2個の細胞へと分裂します。新しい細胞の誕生です。

ここで新しい細胞の1個に注目してみましょう。図のように、生まれた細胞の左右の末端はまったく同じではありません。図の左側の末端は、分裂前から末端として存在していた、いわば古い末端(old end)です。これに対して、右側の末端は、分裂前は細胞の中央部であったわけで、隔壁によって新たにできたものですから、新しい末端(new end)です。このように、生まれたての細胞には、新しい末端と古い末端があります。

その後、細胞の両端は前回述べたように極性成長していくわけですが、古い末端が先に成長を始め、新しい末端の成長はそれよりも遅れます。新しい末端の成長が始まることをNew End Take Off (NETO) と呼びます。

それではなぜ新しい末端の成長は遅れるのでしょうか? 図をヒントとして想像してみてください。タネあかしをすればアクチン(と微小管)が鍵ですが、それが何であるかを知らない人でも、まず図を見てなぜ2つの末端の成長がずれて起きるのかを想像してみるのがよいと思います。

このようなシンプルな疑問から細胞極性成長の壮大な分子メカニズムの探究がはじまったわけです。よく考えてみると、これまでみてきた極性成長の説明文の中には、他にも極性成長における重大な謎がいくつか潜んでいます。なにか思いつきますか?

話がずれますが、
「これが起きるのはなぜだろう?」というシンプルな疑問があって、その謎を解きたいと思うのが科学の面白さだと思います。その気持ちは小学生でも研究者でも同じようなものです。
そのためには細胞なり生物なりで起きている「現象」をじっくり観察することが大事です。中高生、大学生の理系離れというのは、そういう面白さよりも、専門的な知識の詰め込みが先行しているからなのかもしれません。学生時代理科嫌いだった自分の意見です。

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