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2010年2月12日金曜日

微小管の構造


話を極性成長からスピンドルに戻すにあたって、まず微小管というものが何であるかについて調べてみましょう。

微小管という細胞内構造はとても長い繊維のような構造ですが、タンパク質でできています。研究していると当たり前のことになってしまい特別には意識しないのですが、時々この事に気づかされてはっとします。

微小管(microtubule)は2種類のチューブリン(tubulin)というタンパク質(αとβ)が数珠つなぎになった(=重合した)ものです。


図のように、α-チューブリンとβ-チューブリンからなる2量体が整列して重合していくわけですから、当然、重合してできた微小管には「向き」ができます。これを極性といいます。細胞の極性とはまた別に、微小管という繊維状の構造物にも極性があるわけです。微小管の末端のうち、α-チューブリンが露出している末端をマイナス端、β-チューブリンが露出しているほうをプラス端と呼びます。試験管内で重合させた微小管は、プラス端側でもマイナス端側でも重合をおこないます。しかし、プラス端のほうが重合速度が圧倒的に速いことが知られています。

チューブリンはGTP結合タンパク質です。α/β-チューブリン2量体が重合していくとき、GTP結合型のチューブリンがどんどん重合していきます。重合したチューブリン2量体ではGTPの加水分解が起き、GDPになります。このGDP型のチューブリンが微小管の末端にあるときは、末端からばらばらになり易い(脱重合しやすい)性質があります。ですから、重合が盛んに起きているときには、末端は安定に微小管を伸長させますが、盛んでない状況下ではGDP型のチューブリンが末端に存在しがちになり、基本的に脱重合する運命にあります。

ということは、ひとたび微小管が形成されてしまえば、なかなか長さ不変というわけにはいきませんね。重合し続けるか、脱重合するか。微小管はこれを繰り返して、ダイナミックな繊維として存在します。このような性質を微小管のダイナミック・インスタビリティ(動的不安定性)と呼びます。

じゃあそんなに微小管がダイナミックなら、微小管は染色体分配などの機能を落ち着いて発揮できないんじゃないの?と思うかもしれません。その辺を次回見ていきましょう。

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