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2010年1月7日木曜日

減数分裂という細胞分裂の特殊性


(3) 減数分裂における特殊な細胞周期進行はどのようにして起きるのか? について書きます。

 今日はまず減数分裂についてです。
ゲンスウ分裂、私は高校1年のとき確かに生物の授業でその言葉を聞いたことがあるのですが、実はその頃はそれほど生物に興味はなかったので大学3年になるまでその言葉の意味が分からずにいました。こんなですから、高校時代の興味とか出来不出来が必ずしも将来の仕事につながらないケースが少なからずあります。難しいとか理解できないことを理由に何かを断念しようとしている若い人がいるならば、それを理由に諦める必要はない、と心にとめておいてください。

さて「減数分裂meiosis」とは、簡単に言うと配偶子(精子、卵子、酵母ならば胞子)を形成するための特別な細胞分裂の方法です。これに対して、通常の、いわゆる細胞増殖のための細胞分裂のことを「体細胞分裂mitosis」と呼びます。既に「スピンドル(紡錘体)微小管とは」の図のなかでも「体細胞分裂」のことを説明してます。

それでは細胞分裂の観点から見ると、減数分裂は体細胞分裂と比較してどこが違っているのでしょうか? 下の図は分裂酵母の細胞周期を模式的に描いた図ですが、体細胞分裂と減数分裂の2つの分裂パターンの相違点が示されています。



通常、分裂酵母の細胞は体細胞分裂により増殖を繰り返しますが、栄養源がなくなるとG1期で停止し、そこから減数分裂過程へとシフトします。まず、酵母細胞は接合を始めます。じつは酵母には性別があって、オスとメスそれぞれに例えられるような細胞があります。これらが接合して、父親由来のDNAと母親由来のDNAがひとつの細胞の中に共存する、いわゆる二倍体細胞ができます。

接合は酵母ならではの現象だとも言えますが、重要なことは、接合の結果生じる細胞は、ヒトの細胞と同じで両親由来のDNAをもつ二倍体細胞だということです。この二倍体細胞が、いよいよ配偶子を作るための減数分裂を始めます。

まず、減数分裂を始める前にDNA複製をおこないます。減数分裂前DNA合成(premeiotic DNA systhesisまたはpreS期)です。これによって両親由来の染色体(一対の相同染色体)がそれぞれ複製されます。DNA含量は、接合前が1セットであったのに対して、接合で2セット、複製の結果4セットになりますよね。この時期に、減数分裂組み換えという非常に重要な現象があり、両親由来のDNAが組み換えられます。分かりづらければ、両親の遺伝子が部分的に混ぜられたハイブリッド染色体ができあがるというイメージでどうでしょうか(厳密には語弊ある書き方ですが)。

ここから、まず減数第一分裂が起きて、一対の相同染色体がふたてに分かれます。還元分裂といいます。これでまず核は2個になり、それぞれの核が2セットの遺伝子をもつ状態になります。(減数分裂の染色体分配様式については東大・分生研の渡邊嘉典教授の研究室で非常に精力的に研究がなされております。私が東大・山本正幸研究室で大学生・大学院生をしていたとき実験を指導してくれた先生です)

次に、減数第二分裂が起きて、2個の核が分裂して4核になります。2セット持っていた遺伝子は、核ひとつあたり1セット、つまり一倍体になります。こうして、二倍体細胞から一倍体細胞の胞子が4個できます。胞子は、固い胞子壁に包まれており、栄養のない環境でもしばらく休眠状態で存在します。これが発芽すれば、また一倍体細胞としての体細胞分裂周期がスタートし、細胞が増殖します。

重要なことは、減数分裂では組換えという作業があり、その後、分裂が2連続で起きることです。通常の体細胞分裂であれば、分裂と分裂のあいだにはかならずDNA複製(S期)が存在するはずですが、減数分裂ではDNA複製なしで2連続の分配をおこないます。おおまかな点しか今は触れられませんでしたが、このように、減数分裂は様々な特殊性が潜んでいる細胞周期なのです。

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