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2010年1月6日水曜日

(2) 細胞周期と微小管の関係


今日はこの前分類した研究項目の(2)について書きます。例によって、まずは学部生くらいが分かるくらいの雰囲気で書き、更新するごとに専門的になっていくスタイルで書いてみます。


まず細胞は細胞周期というサイクルを繰り返すことで増殖することを再度確認しておきます。下の図の左側に輪で描きましたが、細胞周期はG1期ーS期ーG2期ーM期、そしてまたG1期に戻る、という流れで1周期です。分かりづらい場合は、ひとつの細胞の一生だと思ってくれてもいいです。

細胞の核の中には、遺伝子である染色体DNAが収納されています。この染色体はS期(Synthesis:合成期)で複製されて、M期(Mitosis:有糸分裂期)で分配されます。G1とG2は次のステップの準備のためのギャップ期です。このように細胞周期は染色体DNAの状態を反映しているわけですが、細胞周期の時期によって、微小管もその姿を大きく変化させます。これは、分裂期(M期)には微小管がスピンドルとして染色体を分配することから考えても当然のことといえるでしょう。


それでは分裂期ではない時期(細胞周期の間期interphaseと呼びます)においては微小管はどうなっているのでしょうか。上図のように、間期では微小管は細胞質に網目状の構造を作っています。この網目状の構造は、細胞の伸長する方向性(極性成長)を決めたり、いくつかの物質を細胞内で輸送するためのレールとして機能したりします。





それは、我々が研究材料として使っている分裂酵母でも基本的に同じです。間期には細胞質微小管があり、分裂期にはスピンドル微小管が形成されます。「基本的に」と書いたのにはわけがあって、やはり分裂酵母とヒトとでは違うところもあります。上の2種類の図を見比べて、ヒトなどの一般的な細胞と分裂酵母の大きな違いはどこにあるのか考えてみると良いかもしれません。その「違い」については後日書きます。


前置きが長くなりましたが、我々が研究しているのは、間期から分裂期へと細胞周期が移るときに、どのようなメカニズムで微小管の劇的な構造変化が起きるのかです。実はこれまでのところほとんど分かっていないのです。私はロンドンのTakashi Toda博士の研究室(Cencer Research UK, London Research Institute)でポスドク研究員として研究していたときに、このメカニズムを調べていこうと考えました。
2007年にはその契機となる論文、Alp7/TACC is a crucial target in Ran-GTPase-dependent spindle formation in fission yeast. Masamitsu Sato and Takashi Toda, Nature (2007) 447:334-7. を出すことができて、現在も研究を続けております。現在もToda先生との共同研究で進めており、また、科学技術振興機構(JST)のさきがけ研究員としてもこの課題に取り組んでおります。


ではこれ以上の詳細は後日ということで。


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