[Japanese/English]

2010年1月13日水曜日

(4)細胞極性について


当たり前のことですが、細胞には大きさや形があります。細胞は成長したり(大きくなったり)形を変えて動いていったりすることも当然あります。それがどのような分子機構で起きているのかを探究するのが細胞の形態形成研究です。そして、細胞骨格と呼ばれる細胞内の器官などがこの細胞形態の変化に重要な役割を果たしています。


高校教科書的な細胞のイメージだと細胞にはあまり方向性がない(上下左右に対称だったり360度同じランダムな形)印象を受けるのかもしれません。しかし、細胞はある特定の方向に伸びていったり、形態を変化させたりします。このような方向性を、細胞の極性と呼びます。


例えば神経細胞には明らかな極性があります。軸索や樹状突起です。
我々が研究している分裂酵母にも極性があります。下の図のように、分裂酵母は細長い筒のような形です。細胞が細胞周期のG1期にあるときは、細胞は比較的短いですが、S期ーG2期と経ることで長くなり、成長していきます。M期で2個の細胞に分裂して長さは半分になるわけですが、そこからまた細胞周期を繰り返し、次のM期をmaxとするように長くなっていきます。




ここですでに、分裂酵母の極性が登場していることになります。つまり細胞は全体的に(360度すべての方向に)大きくなるのではなくて、一定の方向(長軸方向)に長くなっていくのです。たいへんアバウトな言い方ですが、これだけでも分裂酵母の細胞極性です。


すでに書いたように、我々は細胞周期における、微小管など細胞骨格の変化についての研究をしているわけですが、細胞極性もまさにそのテーマに合うわけです。第一に、細胞がどのようにしてその伸びる方向性を決めて(あるいは、決まって)いるのか。いわば、極性成長の空間的コントロールがどのようにされているのか、という研究です。またG1からG2期、M期をピークとして成長するわけですから、時間的にも細胞の極性成長はコントロールされていなければいけません。これは極性成長の時間的コントロールです。時間的・空間的、両方がうまくかみ合って、分裂酵母の細長い形が永遠に維持されてきているわけですから、本当に神秘だな、と思います。


われわれは昨年からスイス・チューリヒの連邦工科大学のグループ、イタリアのトレント大学のグループの合計3組で、極性成長に関する共同研究を開始しました。志を同じくするもともとの友人たちが集まり、それぞれの得意分野やテクニックを融合させることで次世代のサイエンスを切り開こう!という楽しい研究の場です。我々の共同研究はHuman Frontier Science Program (HFSP)という国際財団によって活動がサポートされていることをここに明記して謝辞とします。世界中の生命科学分野の研究者たちが、日々の実験はもちろんのこと、共同研究者とのコミュニケーション、会合ができるようにフレキシブルに研究者をサポートしてくれる画期的な財団です。

共同研究のふたりの研究者たちと、HFSP受賞の喜びを分かち合い、今後の研究の方針を議論するために、昨年10月にはチューリヒに行ってきました。




共同研究ミーティングinチューリヒの話はまた追ってすることにします。そもそも、細胞極性の話もまだ全然終わってないので、それを次回ということで。。。。

0 件のコメント:

コメントを投稿