前回からの続きです。
Karsenti, Kirschnerらのグループは、繊維芽細胞から中心体を(核と一緒に)除去して、間期における細胞内微小管がどのような影響を受けるか調べました(1984)。
ひとことでいえば、中心体がない細胞では、間期微小管の数が激減しました。これだけでは微小管も一緒に遠心除去されただけかもしれないので、彼らはさらに微小管重合阻害剤(ノコダゾール)を加えて、ひとまず細胞内の微小管構造をすべて破壊しました。その後、ノコダゾールを洗い流し、通常の培養に戻すことで、微小管をいちから再形成させる実験をおこないました。
すると、中心体のある細胞では微小管が再形成されるのに対して、中心体のない細胞では微小管の再形成があまり活発ではないことがわかりました。すなわち、中心体は間期微小管を形成する機能がある、という結論になります。
同じく1984年に、同じくMitchisonとKirschnerがnatureの同じ号に2つの論文を出しています。そのなかの1つで、彼らは先ほどの論文とは逆に、細胞から中心体のみを単離して、試験管内において、単離した中心体が微小管に与える影響を観察しています(Mitchison and Kirschner, nature 312: 232-(1984))。そのなかで彼らは実際に、中心体には微小管を形成する活性があることを確認しています。
私がこのKirschnerグループの素晴らしいと感じたところは、さきのKarsenti論文で中心体をなくした細胞でのアッセイをするだけではなく、Mitchison論文では逆に中心体だけ取りだしてきて試験管内でアッセイすることで、議論をしっかりとしたものにしている点です。細かい実験の追加によって理論を固めるというよりも、別の大きな実験をおこなうことで検証・実証していく、これはわたしにとっては理想的なサイエンスです。
話がそれましたが、これらの論文の後に、前回紹介した1985年のKirschnerらの論文が続き、「微小管は中心体から形成されることで、選択的に13プロトフィラメントになる」という流れができあがります。
その後の細胞生物学研究の発展により、必ずしもすべての細胞質の微小管が中心体から形成されるとは限らないことも分かりました。分裂期のスピンドル(紡錘体)微小管も、すべてが中心体から形成されるわけではありません。
すると、疑問がわきます。これらの「中心体に依存しないで形成された微小管」は本当に13プロトフィラメントなのでしょうか?
ここで重要となってきたのが、微小管を形成する基点だと以前書いた「γーチューブリン複合体」です。昨年、David AgardとTrisha Davisのグループが、γーチューブリン複合体の構造についての論文をnatureに発表しました。
次回はそこから書きます。
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