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2011年2月10日木曜日

13本でなければだめなんですか?


微小管を構成するプロトフィラメントの本数がいくつなのか、という話をしました。細胞内の微小管は13プロトフィラメントが大部分で、試験管内で重合させると14プロトフィラメントなどのmixになるということです。

どうして13なのでしょうか。14本ではだめなんでしょうか? その辺ははっきりしていませんし、生物種や細胞種で違うかもしれません。1985年のKirschnerらの論文では、神経芽細胞腫(neuroblastoma)から単離した微小管の82%は13プロトフィラメントだと記載しています(Evans, Mitchison and Kirschner, J. Cell Biol., 100:1185-(1985))。80年代にはプロトフィラメントに関する研究も多くみられましたが、その後あまり発展した印象を受けません。

細胞質微小管やスピンドル(紡錘体)微小管のみではなく、他のタイプの微小管はどうでしょうか?

特定の細胞、特定の生物種にみられる鞭毛や繊毛の中心部分の軸として、いわゆる軸糸(axoneme)と呼ばれる構造があります(図参照)。軸糸の根本の部分(基部)には基底小体(basal body)と呼ばれる構造があり、いずれも微小管を含みます。軸糸は、通常(注)13+10プロトフィラメントからなるダブレット微小管が円形に9本配列された「9+2構造」をとります。基底小体は、13+10+10プロトフィラメントからなる3連のトリプレット微小管が9本並んだ「9+0構造」をとります。中心体のなかの中心小体も、基底小体と同様のトリプレット微小管です。(注:世の中には10や11で描いてある図があって、どれが正しいのか、どれが一般的なのか私は調べてないのでよく分かりません。図もあくまでも模式的なもので、正確ではありません)

このように、軸糸や基底小体、中心小体含めて、必ずしも「13」がすべてではないですが、やはり原則13本というのはかなり堅い約束事のように思えます。

チューブリンを用いて微小管を作るときに、たまたま13本だと微小管が最も安定な構造になるとか、しなやかになるとか。あるいは逆に、13本で安定になるようにチューブリンが進化したと想像するべきか。まだ勉強不足で歴史的にどこまで分かっているのか自分で調べきれてませんが、少しずつ調べていこうと思います。

わたしは鞭毛・繊毛や微小管構造の研究者ではなく、絵を自分で描いてはみましたが、専門家のものには遠く及ばないので、正確な専門家の先生方の絵を参考してください。東京大学理学系研究科生物科学専攻の神谷律教授、廣野雅文准教授らのグループはまさに専門家でして、そちらを是非ご覧になってください。とても面白いです。両先生はもちろんのこと、助教の若林さん、柳澤さんにも大変お世話になっています。

そんなこんなで、13プロトフィラメントと14プロトフィラメントの微小管を自分で描いてみてはじめて気がついたのですが、13と14では断面図でみたときの大きさが違うことになります。


言われてみると数学的に当たりまえなんですけどね。Kirschnerらの前述の1985JCB論文の写真を定規で測ってみましたが、確かに13<14<15の順で断面が大きくなります。そりゃ、構造の違いが性質の違いを生み出す可能性はあるかもしれませんね。

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