[Japanese/English]

2010年1月27日水曜日

学術雑誌








学術雑誌:ネット購読料高騰に悲鳴 3年で2.5倍


これは確かに大きな問題ですね。急騰ですよ。

私は最近、これまで聞いたことない学術雑誌が多すぎると感じてます。
あんまり雑誌が細分化しても結局はそんなに読まないんですよね。たまたま自分の興味ある論文が載っていたので1報読んだっきりで、その後2報目を読むことのない新興雑誌って結構あると思いませんか? 読者の立場からすれば、そんな雑誌はいらないです。

しかし、著者(投稿者)としての立場ではどうでしょうか。ある意味、論文数が問われる世界でもあるので、雑誌数は増えるし、そのことを望んでいる研究者も多いのかもしれません(自分はそうではないですが)。

最初は聞いたことも興味もなくても、そんな新興雑誌から「review記事書いてよ」なんて依頼が来れば、ついその話にのってしまう。それまで聞いたことも投稿しようとも思わなかった新興雑誌が、急に「ひいきの雑誌」になってしまう。自分も、それを読んだ読者も「今度はここに論文投稿してもいいな」なんて思ったりして、ずるずると引きずり込まれる、自分はそんな気がします。

オンライン出版のみにすれば経費もあまりかからず、投稿は減らず、雑誌社は儲かるのだという意見も確かにあります。この悪循環を断ち切るべきか、あるいはどこかのステップが破綻するのが先か。もう、日本の大学は一致団結して、パッケージ購読をやめてもいいのかもしれません。

そんなことよりも、東大図書はnatureの古い論文をオンラインで読めるようにしてほしいです。

2010年1月26日火曜日

かずさ







かずさアカデミアパーク:経営が破綻 千葉県も出資


バイオ研究部門にとってはきびしい話ですが、
かずさDNA研究所にはぜひ頑張って欲しいです。
そして日本にもっと大学以外の研究施設が定着することを期待してます。


さて、そろそろ微小管の話をしなければ、、、、

2010年1月23日土曜日

マスコミの果たす役割

朝日新聞の記事:
仕分け前に「世界一は困難」 次世代スパコンで文科省

http://www.asahi.com/science/update/0123/TKY201001230016.html

この記事は何を伝えたかったのでしょうか。


利根川進氏が先日、事業仕分けを受けて東大でおこなった会合における討論で、科学技術研究を国民に理解してもらうためには「マスコミの役割が重要」とコメントしたことを思い起こさずにはいられません。ちなみに、討論会場には多くの記者がいたにもかかわらず、同氏のこのコメントは新聞テレビでは紹介されなかったということも特筆に値します。

2010年1月21日木曜日

染色体ワークショップ

染色体ワークショップのため、御殿場に来ています。

染色体の研究者がとても次元の高い議論を繰り広げる、非常によい学会です。
微小管と動原体の接着の研究者も参加しているので、その分野は私には特に重要ですが、それ以外もとても勉強になります。
議論や発表をきいて、何かよいインスピレーションを受けることができればと思います。

しかし今回は部屋がほとんどの人がシングル部屋だったのには驚きました。

2010年1月15日金曜日

神田橋の桜

昨日の朝気がついたのですが、神田橋の桜が咲いていました。

同時に、歩いていたら花粉を感じました。これを乗り超えないと春は来ません。



2010年1月13日水曜日

(4)細胞極性について


当たり前のことですが、細胞には大きさや形があります。細胞は成長したり(大きくなったり)形を変えて動いていったりすることも当然あります。それがどのような分子機構で起きているのかを探究するのが細胞の形態形成研究です。そして、細胞骨格と呼ばれる細胞内の器官などがこの細胞形態の変化に重要な役割を果たしています。


高校教科書的な細胞のイメージだと細胞にはあまり方向性がない(上下左右に対称だったり360度同じランダムな形)印象を受けるのかもしれません。しかし、細胞はある特定の方向に伸びていったり、形態を変化させたりします。このような方向性を、細胞の極性と呼びます。


例えば神経細胞には明らかな極性があります。軸索や樹状突起です。
我々が研究している分裂酵母にも極性があります。下の図のように、分裂酵母は細長い筒のような形です。細胞が細胞周期のG1期にあるときは、細胞は比較的短いですが、S期ーG2期と経ることで長くなり、成長していきます。M期で2個の細胞に分裂して長さは半分になるわけですが、そこからまた細胞周期を繰り返し、次のM期をmaxとするように長くなっていきます。




ここですでに、分裂酵母の極性が登場していることになります。つまり細胞は全体的に(360度すべての方向に)大きくなるのではなくて、一定の方向(長軸方向)に長くなっていくのです。たいへんアバウトな言い方ですが、これだけでも分裂酵母の細胞極性です。


すでに書いたように、我々は細胞周期における、微小管など細胞骨格の変化についての研究をしているわけですが、細胞極性もまさにそのテーマに合うわけです。第一に、細胞がどのようにしてその伸びる方向性を決めて(あるいは、決まって)いるのか。いわば、極性成長の空間的コントロールがどのようにされているのか、という研究です。またG1からG2期、M期をピークとして成長するわけですから、時間的にも細胞の極性成長はコントロールされていなければいけません。これは極性成長の時間的コントロールです。時間的・空間的、両方がうまくかみ合って、分裂酵母の細長い形が永遠に維持されてきているわけですから、本当に神秘だな、と思います。


われわれは昨年からスイス・チューリヒの連邦工科大学のグループ、イタリアのトレント大学のグループの合計3組で、極性成長に関する共同研究を開始しました。志を同じくするもともとの友人たちが集まり、それぞれの得意分野やテクニックを融合させることで次世代のサイエンスを切り開こう!という楽しい研究の場です。我々の共同研究はHuman Frontier Science Program (HFSP)という国際財団によって活動がサポートされていることをここに明記して謝辞とします。世界中の生命科学分野の研究者たちが、日々の実験はもちろんのこと、共同研究者とのコミュニケーション、会合ができるようにフレキシブルに研究者をサポートしてくれる画期的な財団です。

共同研究のふたりの研究者たちと、HFSP受賞の喜びを分かち合い、今後の研究の方針を議論するために、昨年10月にはチューリヒに行ってきました。




共同研究ミーティングinチューリヒの話はまた追ってすることにします。そもそも、細胞極性の話もまだ全然終わってないので、それを次回ということで。。。。

2010年1月12日火曜日

日本細胞生物学会

学会といえば、
5月に参加する予定の学会を宣伝しておきましょう。

第62回日本細胞生物学会の大会が5月19日〜21日まで。
大阪です。私は実は大阪に行くのも9年ぶりです。
9年前だって遊びに行っただけですし。

中身については以下を参照。
http://www.congre.co.jp/jscb2010/

2010年1月8日金曜日

生命科学gCOEネットワーク・フォーラム

第2回 生命科学gCOEネットワーク・フォーラム2010、に参加することになりました。


http://bsgcoe.naist.jp/news/100107a.html

意外にも8年ぶりに京都に行きます。とはいえ駅前しか歩かない予感がします。
日帰りですし。

2010年1月7日木曜日

減数分裂という細胞分裂の特殊性


(3) 減数分裂における特殊な細胞周期進行はどのようにして起きるのか? について書きます。

 今日はまず減数分裂についてです。
ゲンスウ分裂、私は高校1年のとき確かに生物の授業でその言葉を聞いたことがあるのですが、実はその頃はそれほど生物に興味はなかったので大学3年になるまでその言葉の意味が分からずにいました。こんなですから、高校時代の興味とか出来不出来が必ずしも将来の仕事につながらないケースが少なからずあります。難しいとか理解できないことを理由に何かを断念しようとしている若い人がいるならば、それを理由に諦める必要はない、と心にとめておいてください。

さて「減数分裂meiosis」とは、簡単に言うと配偶子(精子、卵子、酵母ならば胞子)を形成するための特別な細胞分裂の方法です。これに対して、通常の、いわゆる細胞増殖のための細胞分裂のことを「体細胞分裂mitosis」と呼びます。既に「スピンドル(紡錘体)微小管とは」の図のなかでも「体細胞分裂」のことを説明してます。

それでは細胞分裂の観点から見ると、減数分裂は体細胞分裂と比較してどこが違っているのでしょうか? 下の図は分裂酵母の細胞周期を模式的に描いた図ですが、体細胞分裂と減数分裂の2つの分裂パターンの相違点が示されています。



通常、分裂酵母の細胞は体細胞分裂により増殖を繰り返しますが、栄養源がなくなるとG1期で停止し、そこから減数分裂過程へとシフトします。まず、酵母細胞は接合を始めます。じつは酵母には性別があって、オスとメスそれぞれに例えられるような細胞があります。これらが接合して、父親由来のDNAと母親由来のDNAがひとつの細胞の中に共存する、いわゆる二倍体細胞ができます。

接合は酵母ならではの現象だとも言えますが、重要なことは、接合の結果生じる細胞は、ヒトの細胞と同じで両親由来のDNAをもつ二倍体細胞だということです。この二倍体細胞が、いよいよ配偶子を作るための減数分裂を始めます。

まず、減数分裂を始める前にDNA複製をおこないます。減数分裂前DNA合成(premeiotic DNA systhesisまたはpreS期)です。これによって両親由来の染色体(一対の相同染色体)がそれぞれ複製されます。DNA含量は、接合前が1セットであったのに対して、接合で2セット、複製の結果4セットになりますよね。この時期に、減数分裂組み換えという非常に重要な現象があり、両親由来のDNAが組み換えられます。分かりづらければ、両親の遺伝子が部分的に混ぜられたハイブリッド染色体ができあがるというイメージでどうでしょうか(厳密には語弊ある書き方ですが)。

ここから、まず減数第一分裂が起きて、一対の相同染色体がふたてに分かれます。還元分裂といいます。これでまず核は2個になり、それぞれの核が2セットの遺伝子をもつ状態になります。(減数分裂の染色体分配様式については東大・分生研の渡邊嘉典教授の研究室で非常に精力的に研究がなされております。私が東大・山本正幸研究室で大学生・大学院生をしていたとき実験を指導してくれた先生です)

次に、減数第二分裂が起きて、2個の核が分裂して4核になります。2セット持っていた遺伝子は、核ひとつあたり1セット、つまり一倍体になります。こうして、二倍体細胞から一倍体細胞の胞子が4個できます。胞子は、固い胞子壁に包まれており、栄養のない環境でもしばらく休眠状態で存在します。これが発芽すれば、また一倍体細胞としての体細胞分裂周期がスタートし、細胞が増殖します。

重要なことは、減数分裂では組換えという作業があり、その後、分裂が2連続で起きることです。通常の体細胞分裂であれば、分裂と分裂のあいだにはかならずDNA複製(S期)が存在するはずですが、減数分裂ではDNA複製なしで2連続の分配をおこないます。おおまかな点しか今は触れられませんでしたが、このように、減数分裂は様々な特殊性が潜んでいる細胞周期なのです。

2010年1月6日水曜日

(2) 細胞周期と微小管の関係


今日はこの前分類した研究項目の(2)について書きます。例によって、まずは学部生くらいが分かるくらいの雰囲気で書き、更新するごとに専門的になっていくスタイルで書いてみます。


まず細胞は細胞周期というサイクルを繰り返すことで増殖することを再度確認しておきます。下の図の左側に輪で描きましたが、細胞周期はG1期ーS期ーG2期ーM期、そしてまたG1期に戻る、という流れで1周期です。分かりづらい場合は、ひとつの細胞の一生だと思ってくれてもいいです。

細胞の核の中には、遺伝子である染色体DNAが収納されています。この染色体はS期(Synthesis:合成期)で複製されて、M期(Mitosis:有糸分裂期)で分配されます。G1とG2は次のステップの準備のためのギャップ期です。このように細胞周期は染色体DNAの状態を反映しているわけですが、細胞周期の時期によって、微小管もその姿を大きく変化させます。これは、分裂期(M期)には微小管がスピンドルとして染色体を分配することから考えても当然のことといえるでしょう。


それでは分裂期ではない時期(細胞周期の間期interphaseと呼びます)においては微小管はどうなっているのでしょうか。上図のように、間期では微小管は細胞質に網目状の構造を作っています。この網目状の構造は、細胞の伸長する方向性(極性成長)を決めたり、いくつかの物質を細胞内で輸送するためのレールとして機能したりします。





それは、我々が研究材料として使っている分裂酵母でも基本的に同じです。間期には細胞質微小管があり、分裂期にはスピンドル微小管が形成されます。「基本的に」と書いたのにはわけがあって、やはり分裂酵母とヒトとでは違うところもあります。上の2種類の図を見比べて、ヒトなどの一般的な細胞と分裂酵母の大きな違いはどこにあるのか考えてみると良いかもしれません。その「違い」については後日書きます。


前置きが長くなりましたが、我々が研究しているのは、間期から分裂期へと細胞周期が移るときに、どのようなメカニズムで微小管の劇的な構造変化が起きるのかです。実はこれまでのところほとんど分かっていないのです。私はロンドンのTakashi Toda博士の研究室(Cencer Research UK, London Research Institute)でポスドク研究員として研究していたときに、このメカニズムを調べていこうと考えました。
2007年にはその契機となる論文、Alp7/TACC is a crucial target in Ran-GTPase-dependent spindle formation in fission yeast. Masamitsu Sato and Takashi Toda, Nature (2007) 447:334-7. を出すことができて、現在も研究を続けております。現在もToda先生との共同研究で進めており、また、科学技術振興機構(JST)のさきがけ研究員としてもこの課題に取り組んでおります。


ではこれ以上の詳細は後日ということで。


2010年1月5日火曜日

スピンドル(紡錘体)微小管とは

(1) スピンドルについて
基礎的なところから書きます。

これはいろいろな事情でまだ細かく書くことができないけれども、中心的に研究しているプロジェクトのひとつです。
細胞が分裂することで我々の体は作られるわけで、そう考えると細胞分裂って生命のいちばん基礎中の基礎、原点ですよね。このことを考えると自分でもとても神秘的なムードに満たされます(?)




下の図のように、細胞が左右の2個に分裂する際には、染色体(ゲノムDNA)が左右のふたてに分配されます。もしここで染色体が正確に均等に分けられないと、2個の細胞は遺伝情報に偏りが生じて細胞死や細胞のガン化の原因となるので、何が何でもゲノムDNA(染色体)は2個に均等に分ける必要があります。


染色体分配はこのような非常に厳密な過程なのですが、ここで、スピンドル微小管(日本語では一般的に紡錘体微小管と呼ばれるーーーけど少し堅苦しいのでここではあまり使わないようにします)が染色体を左右に引っ張り分配するという大役を演じているのです。スピンドル微小管は、おおまかにいうと中心体と呼ばれる構造体から伸びてきた繊維状の構造であり、これが染色体DNAの動原体(キネトコア)と呼ばれるところにくっついて、物理的に左右に引っ張るというイメージがわかりやすいでしょう。

ここ10〜20年でこの分野は爆発的に研究がすすみ、この教科書的な染色体分配のメカニズムが詳細にわかったり、あるいは実験結果がイメージしていたこととは違っていたりと、いろいろなことが明らかになりました。そのうちのいくつかは紹介していきたいと思います。

それでわれわれも、分裂酵母という生き物(細胞)を用いて、微小管や微小管に結合するタンパク質の機能を探ることで、このような厳密でかつダイナミックな「スピンドル微小管による染色体分配」がどのように制御されているのか、我々の視点から研究しております。

2010年1月2日土曜日

twitterについて

今年もよろしくお願いします。

さて、念願のtwitterもアカウントとってこのページにリンクさせました。
アカウントは masamitsu_sato です。
まだ始めたばかりでread onlyですが、twitterのほうは日本語・英語両方でやっていくということでこっちのblogと差別化していこうと思います。