[Japanese/English]

2010年11月26日金曜日

HFSP会議in Tokyo

今月初旬にはインドでHFSP meetingがあり、共同研究者と打ち合わせをした話をしました。
インドの熱気がまださめやらぬ、といったところですが、実は今週、またまた共同研究者と会議をしてます。それも東京でです。

英国とイタリアの共同研究者のラボから、学生やポスドクが一同に会して、現状報告とそれに対する議論をして、今後の方針を決定するというのが狙いです。へたなmeetingよりもよっぽど強烈な議論ができるというか、この熱気は半端ではありません。3日間、部屋にこもって議論し続けます。昨日は夜11:30まで会議をしました。夕食は会議室の中で、弁当です。日本人以上に部屋にこもってますね。

今日もまだ会議が続いており、深夜までかかるのでは?と懸念が出てます。それでも充実しているから、全然嫌ではありません。もしこれが日本人のみによるきわめて日本的な会議であれば、3日はもたないでしょうね。私はもちません。

会議の雰囲気についてはまた後日書くことにします。インドのこともまだ書いてなかったですね。

会議に戻らなければ。。。

2010年11月17日水曜日

HFSP会議 in インド(3)social program


インドでのHFSP meetingですが、この会議はHFSPから奨学金や研究費を受け取っている人達が参加する会議です。となると、参加者がどのような研究をしているかというのは多岐にわたり、特に微小管とか細胞分裂とかに限ったものではありません。というか、細胞分裂の分野も多くの研究分野の一つですから、実際には同業者はあまりいないともいえます。

そうなると、学会の口頭発表も「自分の知らない分野」のものが必然的に多くなります。それでも、各発表はレベルが高いものばかりで、(自分のことを棚に上げて言うなら)HFSPの受賞者というのはレベルが高いということを実感します。

実際に、大学院で学位(博士号)をとった卒業生達がポスドク研究員として海外留学する際にHFSPの奨学金を獲得するのはとても難しく、狭き門になっています。わたしは当然、HFSP fellowshipなどとは縁がありませんでした。しかし、HFSP奨学金を受けている日本人のポスドク研究員も少なくなく、日本人研究者のレベルの高さと、HFSP事業における日本という国家の貢献度の高さを示しているといえます。今回何人か、海外で研究する日本人ポスドク研究員とお会いましたが、とても良い業績をあげていて、素晴らしいと思いました。

細胞分裂や微小管の研究発表もポスター発表・口頭発表あわせて2,3ありましたが(逆に言うとそれくらいしかない)、それは未発表データによるものですから、ここで言及することはできません。論文として公開される日を待ちたいですね。

このように、分野的にはライフサイエンスというだけで特にそれ以上焦点を絞っていないHFSP meetingですから、必ずしもすべて聞いて理解する必要がないと感じることもあるでしょう。そういう時間は、私は共同研究者と研究打ち合わせをしていました。共同研究者は欧州にいるので、顔を合わせて議論できる機会は年に数回に限られます。今回のインド渡航の目的の一つは、我々自身の今後の方針を決めることでした。有意義な時間が過ごせたと思います。

このHFSP会議のひとつの特色は、社交的な意味合いが強いということです。日本語だとちょっと違和感があるけれども、social programが充実しているということです。

例えば、学会の会期中、HFSPが公式に「インド観光ツアー」をいくつか企画していました。HFSPの意図には以下のような意味合いが含まれていると考えられます。つまり、世界中の異分野の研究者が仲良くなることで、これまで実現しなかったような異分野間研究(学際的研究)ができるのではないか、あるいは知り合いを増やすことで国境を越えたサイエンスの発展に貢献できるのではないか、という意図です。そのためなら、皆でツアーに出かけるだけでも、あるいは立食パーティーだけでも、意義があるということになるかもしれません。写真はある日のディナーの模様です。ホテルのビーチに特設ステージ上が設けられ、インドの伝統舞踊が披露されました。とてもエキゾチックですね。


そんな充実したsocial programのおかげで、国籍を問わず、会期中に新しく知り合いになった人が増えました。研究発表や討論以上に、ランチやディナー、ツアーが充実していたというと怒られるかもしれませんが、実はこの考えかたはとても重要で、英国・欧州ではこれを実感する場面が多かったです。これは欧州と日本の考え方の違いのなかでも、大きなウエイトを占めている気がします。

次回はインド体験について書きます。

2010年11月15日月曜日

シンガポール経由インド行き


学会が行われたのはインドのケララ州、ティルバナンタプーラム(旧名トリヴァンドラム)郊外のコヴァラム・ビーチというところです。

成田空港からシンガポール航空機でシンガポールに飛び、そこで乗り換えてシルクエアー機でティルバナンタプーラムに向かいます。

あいにくその日は関東地方に台風が接近中で、大雨の中、家を出ました。飛行機が遅れると、シンガポールで乗り継ぎできなくなり、以前のスイスでのHFSP共同研究会議における、経由地ロンドン・ヒースローでの悪夢再びということになります。。その次のHFSP会議もトレントで現地豪雨のため、経由地フランクフルトで足止めを食らいました。HFSP関連は毎回何かが起きます。

しかし、成田では豪雨であるにもかかわらず、無事に離陸、定時にシンガポールにつきました。ちなみに機体は超大型機のエアバスA380。シンガポール航空が積極的に利用している機体です。機内も新しくて、エコノミークラスなのに全席に電源プラグやUSB端子がありました。USBがあってそれでどうしろっていうのか分かりませんが(笑)。電源は、iPodとかPCを電池を気にせず使えるのはいいですね。

シンガポールでシルクエアー機に乗り換え、ティルバナンタプーラムを目指します。シルクエアーはシンガポール航空の子会社で、とても快適でした。インド行きの便であるせいか、機内食はカレーです。


現地時間の22時頃にティルバナンタプーラム(トリヴァンドラム)空港に到着。初めてのインドに期待と不安が。。。。

入国審査を終えると、学会が準備してくれたヴァンに乗り、コヴァラム・ビーチのホテルに向かいます。空港の外で車を待つのですが、ひろがる光景はインドそのもの。しかし、深夜なのであまり伝わってこない。これくらいなら、ロンドンのイーストエンド某地といい勝負で、シンガポールのリトル・インディアに比べればまだましで、、、。


しかし車が動き出してみると、その道中たるや、、、深夜なので状況がよく分からないのですが、今が21世紀であることを忘れてしまいそうな異様な光景、、、何やらとてつもない所に来てしまったことだけは確かです。良くも悪くも、暗闇の中でよく分からないまま、ホテルに着きました。ホテルは豪華なリゾートホテルで、とても良いところでした。しかし窓の外の景色は暗闇。朝になるまでどんなところか分かりません。

夜が明けて、ブラインドをあけてみると、青く澄み切った空、生い茂るヤシの木、白い砂浜と広大なアラビア海の光景!!


とても美しく、南国に来たことを実感します。こんなところで学会は成立するのでしょうか!?

(続く)

2010年11月12日金曜日

インドに行ってきました


先週は学会があってインドに行ってきました。インドに行くのはこれが初めてでした。学会はどうしても欧米で開かれることが多いので、珍しい経験です。最近はアジアでも日本の他に、韓国、中国、シンガポールなどで大小さまざまな学会が頻繁に開かれています。それでもインドは珍しいほうで、実際に学会参加者の大部分の人は今回が初のインド訪問になったみたいです。

今回の学会は、「Human Frontier Science Program (HFSP) Awardee Meeting」です。だいぶ前に書きましたが、私は英国とイタリアの研究者たちと共同研究をしており、それを金銭的にサポートしてくれるのがHuman Frontier Sceince Program (HFSP)です。1987年のベネチアサミットで日本の中曽根康弘首相(当時)が設立を呼びかけて組織された団体で、世界の生命科学研究者が国境を越えて研究すること(ポスドク留学することや、国際共同研究をすること)を支援してくれます。われわれのグループは幸運にもHFSPの援助を受けており、同じようにHFSPから支援されているポスドク研究員や研究者たちが参加する学会が、今回のように年に1回開かれるAwardee Meetingです。

日本からも、数名のHFSP受賞者たちが参加しました。皆初めてのインドです。写真は学会の会場です。



インドのサイエンスですが、あくまでも私のイメージとしては「第2のシンガポール」の立ち位置をを目指しているように思えました。インドの新しい産業として政府主導のもと科学を推進していこうという意志が強く感じられました。政府による潤沢な研究資金を準備し、また海外の研究者をインドに招聘してインドで研究してもらうことで、世界に「科学立国インド」をアピールしていくようです。将来的には、日本人研究者がインドで自分の研究室を持つ、という時代が来るのかもしれません。

欧米で研究しているような研究をインド国内で展開する、というやり方がある一方で、インド特有のサイエンスというものがあります。つまり、インドで伝統的に(あるいは伝説で)薬理効果があるといわれてきた薬品が、本当に効果があるのか、あるとしたら細胞や生物個体に対してどのような作用を起こしているのか、それを研究することです。今回の学会では、インド国内の研究者がそれらについて研究した結果を報告する発表もありました。こういうオリジナリティーは大事ですね。

偶然にも、先月COP10が名古屋で開催されました。ひとつの論点は、途上国から採取されたり、途上国で伝統的に使われてきた材料資源が、先進国に搾取されて途上国に相応の対価が支払われていないという問題でした。インドの伝統医薬などは、是非インド国内の研究者がその効果を明らかにしつつ、インドの研究が発展していけばよいのだと思います。

次回はインド体験記?を書きたいと思います。